合併・分割

会社合併と会社分割のメリット・デメリットのうち、税金(税務)に関するものに絞って解説いたします。


会社合併の税金に関するメリット・デメリット

【メリット】

  • 損益通算による税金減少の可能性:合併により2社が1社に統合されるため、合併前の黒字と赤字を相殺(損益通算)することができ、グループ全体としての法人税額が減少する場合があります。
  • 譲渡損益の課税繰延べ(適格合併の場合):税務上の「適格合併」の要件を満たす場合、被合併会社の資産や負債を帳簿価額のまま引き継ぐことができ、移転に伴う譲渡損益の計上(課税)を将来に繰り延べることができます。
  • 繰越欠損金の引き継ぎ:適格合併の場合、一定の制限要件をクリアすれば、被合併法人が有していた繰越欠損金を合併法人に引き継ぐことが認められます。
  • 株主の譲渡益課税の繰延べ:一定の要件を満たす場合、被合併会社の株主が合併法人の株式等を取得した際に生じる株式の譲渡益に対する課税が繰り延べられます。

【デメリット】

  • 中小法人の税制優遇枠の減少:合併して1社になることで、中小法人の法人税率の軽減枠、交際費の定額控除枠(年間800万円など)、事業税の軽減税率の適用枠などが1社分に減少し、結果的に税負担が増加する可能性があります。
  • 登録免許税の負担:被合併会社が不動産を所有している場合、所有権移転登記のための登録免許税(合併特例で原則0.4%など)がかかります。
  • 非適格合併時の時価課税:適格合併の要件を満たさない(非適格合併となる)場合、資産や負債が「時価」で譲渡されたものとみなされ、多額の含み益が顕在化して法人税が課税されるリスクがあります。
  • 株主間のみなし贈与課税リスク:同族会社間などの合併において、合併比率が不当(不合理)な場合は、株主間で経済的利益の移転があったとみなされ、贈与税等の課税問題が生じるおそれがあります。


会社分割の税金に関するメリット・デメリット

【メリット】

  • 譲渡損益の課税繰延べ(適格分割の場合):税務上の「適格分割」の要件を満たす場合、合併と同様に資産・負債を帳簿価額で引き継ぐことができ、資産の移転に伴う譲渡損益の課税を繰り延べることが可能です。
  • 不動産取得税の非課税措置:不動産を分割により移転する場合、一定の要件(分割型分割・分社型分割それぞれに定められた要件)を満たせば、不動産取得税が非課税となる特例措置があります。
  • 税制優遇枠の確保・拡大の可能性:事業を分割して資本金が小さな複数の会社に分けることで、交際費の定額控除枠を増やしたり、無償減資を組み合わせて法人住民税の均等割を軽減するスキーム等に活用できる場合があります。

【デメリット】

  • 繰越欠損金の引き継ぎが原則不可:合併と異なり、会社分割では分割する会社自体がそのまま存続するため、たとえ適格分割であっても、原則として分割法人の繰越欠損金を分割承継法人へ引き継ぐことは認められていません。
  • 既存の繰越欠損金等の利用制限:租税回避を防止する観点から、適格吸収分割などを行う場合、分割承継法人がもともと持っていた繰越欠損金の利用や、引き継いだ特定資産を譲渡した際の損失(特定資産譲渡等損失)の損金算入に厳しい制限が課される場合があります。
  • 非適格分割時の時価課税とみなし配当:「適格分割」の要件を満たさない場合は、移転する資産・負債が時価で譲渡されたものとして取り扱われ、含み益に対して法人税が課税されます。また、株主に対して「みなし配当課税」が生じるケースもあります。
  • 登録免許税などの流通税コスト:不動産の移転を伴う場合、非課税要件を満たさなければ不動産取得税が課税されるほか、所有権移転のための個別の登録免許税や印紙税等がかかるコスト負担があります。

会社合併と会社分割のメリット・デメリットについては、経営戦略や法務、税務など様々な観点から以下のようになります。


会社合併のメリット・デメリット

2つ以上の会社が1つの会社に統合される「合併」は、事業規模の拡大やグループ内再編に広く用いられます。


メリット

  • 経営効率の向上とシナジー効果:間接部門や生産設備を集約することによる効率化、市場シェアの拡大、自社にない技術やノウハウ、人材の獲得が期待できます。
  • 税負担の軽減の可能性:当事会社の損益を通算できるため、税金が減少する場合があります。また、税制上の「適格合併」の要件を満たせば、資産や負債を帳簿価額で引き継ぐことで譲渡損益の計上を繰り延べたり、被合併法人の繰越欠損金を引き継いだりすることが可能です。
  • 買収資金が不要:被合併会社の株主に合併法人の株式のみを対価として交付する場合、現金の社外流出を防ぐことができます。
  • 不採算会社の整理:業績不振の子会社を整理し、親会社などの優良企業に統合して救済・再建を図る手段として有効です。


【デメリット】

  • 簿外債務引き継ぎのリスク:消滅する会社の権利義務をすべて「包括承継」するため、予期せぬ簿外債務や不要な資産までも引き継いでしまうリスクがあります。
  • 手続の煩雑さとコスト:株主総会の特別決議や債権者保護手続(公告・催告)など、会社法で要求される手続が複雑であり、実行までに最低でも1か月半程度の期間を要します。
  • 税制上の優遇枠の減少:合併して1社になることで、中小法人の法人税率の軽減枠や、交際費の定額控除枠が減少し、結果的に税金が増える場合があります。
  • 企業風土の融合の難しさ:異なる企業風土を持つ会社同士が結合するため、人事制度の統合や従業員間の調整に多大な手間がかかることがあります。
  • 登録免許税の負担:被合併会社が不動産を所有している場合、所有権移転登記のための登録免許税がかかります。


会社分割のメリット・デメリット

会社の事業に関して有する権利義務の全部または一部を切り出して、他の会社に承継させるのが「会社分割」です。

メリット

  • 事業の選択と集中が容易:必要な事業部門(例えば高収益部門や不採算部門など)のみを切り離して移転することが可能であり、意思決定の迅速化や変化対応力の向上につながります。事業ごとの責任の明確化や、子会社の上場(株式公開)に向けた準備にも有効です。
  • 個別の同意取得が不要(包括承継):事業譲渡と異なり「包括的承継」であるため、取引先との契約関係を移転する際に、個別に相手方の同意(承諾)を得る必要がなく、事業を停止せずにスムーズに承継できます。
  • 資金不要での組織再編:分割の対価として株式を交付することができるため、多額の買収資金を用意せずに企業買収や組織再編が可能です。
  • 税制上の適格措置:適格分割の要件を満たすことで、資産・負債を帳簿価額で引き継ぎ、移転に伴う譲渡損益の計上を繰り延べることができます。不動産の移転に伴う不動産取得税が非課税となるケースもあります。

デメリット

  • 簿外債務のリスクを完全に遮断できない:一部の事業のみを対象とできるものの、事業譲渡とは異なり包括承継の性質を持つため、移転対象とした事業に紐づく偶発債務(簿外債務)を引き継ぐリスクは残ります。
  • 債権者保護手続等が必要:合併と同様に、分割計画書・分割契約書の作成と株主総会の特別決議が原則として必要であり、債権者保護手続も求められます。
  • 労働者保護の手続が必要:従業員を転籍させる場合には、「労働契約承継法」に基づき、労働組合や労働者との事前協議、および個別の通知といった煩雑な手続が義務付けられています。
  • 個別財産の名義変更と許認可の再取得:契約の同意は不要ですが、不動産や特許権などについては個別に登記・登録等を行う必要があります。また、許認可事業を移転する場合、業法等に特別な定めがない限り、承継会社にて新たに許認可を取り直す手続きが必要になることがあります。