複式簿記は証明技術です

複式簿記のイメージが掴めない人がいます。

複式簿記という言葉から「帳簿記入」という行為の事と思っていると本質から離れてしまいます。

本日 2024年6月18日 政治改革として「政治資金規正法改正案」が審議されていて、「カネの抜け道」をどう防ぐかで修正案が出されていますが、もし政治家が簿記一級レベルの知識があれば、抜け道など議論にすらならないのです。議員の立候補の条件に日本商工会議所の簿記一級の合格証を添付する事を決議してくれたら日本は飛躍的に成長すると確信しています。

複式簿記では取引を二つに分けます。例えば
・「車を買った」という現象を①車が増えたという事と②お金が減ったの二つに分けます。この二つに分けたそれぞれの名前を簿記では科目(勘定科目)と言います。
1つの取引に対して2つの科目が出てくる「見え方」を複式簿記と言います。単式簿記では科目のうち利益計算に関係ない科目は無視されます。
取引は下記に分類されます

A(利益に関係ない科目)と(利益に関係ない科目)の二つ  例えば車を買った・・・①車が増えた②お金が減った
B(利益に関係ない科目)と(利益に関係ある科目)の二つ  例えば売上金を現金でもらった・・・①売り上げが増えた②お金が増えた
                           例えば費用を現金で支払った・・・①費用が増えた②お金が減った

複式簿記と単式簿記の同じところは「利益計算」です。本来同じ利益が計算されます。
複式簿記と単式簿記の圧倒的に違うところは「残高計算」です。複式簿記では上記②を加減することで現金残(場合によっては普通預金残)の計算ができますが、単式簿記にはこの機能が無い。
複式簿記では容易に出来ることが単式簿記ではどうしても出来ない事があります。それは「利益が合っている事の証明」
複式簿記では現金残高・普通預金残高等が合っていると言う事は利益は合っていると間接的に証明できますが、単式簿記はこの証明が通用しません。疑われだしたら永遠に疑いを晴らすことが出来ません。実に勿体ない。

複式簿記は「自主的に証明するのに優れた数学」です。しかし単式簿記にも利点はあります。「自主的に証明するのは出来ませんが、他者が(間違いを)証明することも出来ない。」例えば他者が間違いを指摘できるのは一つ一つの取引が正当かどうかだけです。しかし、単式簿記では他者に「無くなってしまったお金はどこに行ったの?」と聞かれたら黙るか知らないと言い切るしかないです。
高式簿記の利点<単式簿記の欠点 その差は大きすぎる。

単式簿記と複式簿記の違いを「単式は簡単で複式は複雑」と回答し
簿記を「帳簿記入のルール」等と一般に言われている(政治家も思っているのでしょう)世の中では政治家や納税者はいつまで経っても身の潔白を証明できないのです。

噓も方便と言いますが、私は簡素に「嘘は(成功への道のりで)遠回り」と考えています。

嘘を否定しているわけではありません。(「真っ黒なものでも申告時には真っ白にするのが税理士さんの仕事」なので、嘘は実在しています。「嘘も方便」とは(仏様が迷える人を救うときに悟りの境地に連れていくために嘘をつくこともあるということで、)大きな善行の前では、偽りも認められるということ。

私は「嘘は遠回り」と書きました。簿記や会計、税務における噓は見方や角度を変えて黒い考えは白くするべきです。

例えば会計で嘘をつく時とはどういう事でしょうか?

・会社を良く見せたい時、利益がたくさん出ている様に見せたい時

・会社を悪く見せたい時、利益があまり出ていない様に見せたい時

当たり前の事ですが、

決算で会社を良く見せたい場合はその後何処かで悪く見せないと正しい姿には戻りません。これが複式簿記の凄いところで怖いところです。

単式簿記であれば、例えば見ず知らずの外国人に嘘八百並べても(心が傷つくだけで)後で謝る必要は無いかもしれません。

複式簿記はそうは行きません。嘘をついたらその嘘をついた履歴がきっちり記録されているのです。

つまり謝る事(複式簿記では正常に戻す行為)をしないと正しい姿に戻れません。

悪いことに複式簿記で一度噓をつくと、例えば一年目に良く見せた場合、二年目は更に良く見せて、三年目は更にもっと・・・とエスカレートしていきます。一年目に嘘をつくと、二年目はもう少し大きな嘘となり、三年目は取り返しのつかない大嘘になるのが常で、これが遠回りだと言った理由です。取り返しのつかない期間穴埋めに忙殺されます。時間の無駄です。最初の小さな穴をごまかしてしまうと必ず取り返しのつかない大きな穴となり、その穴が防ぎきれないこととなった時に大変な事となります。最初の小さな穴はきっちりと決算書に表現しなければなりません。

②脱税だってそうです。たくさん時間を使って脱税をして、びくびくしながら税務署からの電話を待って、税務署員に理解されずに納税して罰金を払う。これはかなりの時間の無駄です。税理士さんに相談しましょう。

③嘘をついて商品を売る。これも一瞬もしかしたら利益が出るかもしれませんが、心は傷つくし、結果として顧客は離れて行くのではないでしょうか。あなたならどうですか?また、ややこしい商売している人の元には「胡散臭い」人が集まるようで、その人たちと絡む時間と失う信用が時間の無駄だなと思います。

まとめると、

①うその決算は簡単です。しかし粉飾決算でその場を乗り切ると、根本的な原因を真剣に考えなくなるため結局は問題解決が出来ずに時間の無駄になります。

②脱税は簡単です。しかし脱税が「合法的」であるという不毛な説明が求められ時間の無駄になります。

③嘘をついてで作った売上は次につながる売り上げではなく、逆に将来性を失うため時間の無駄になるのだと思います。